AVアンプはこう使うと効果的~AVアンプ使用の現実的な問題

 先日、あるオーディオメーカーの代表者や広報担当者と話す機会があったのですが、ここ10年ほどで2チャンネルのオーディオは本当に影が薄くなったと、しばし感慨に耽りました。今は何といっても携帯デジタルオーディオ機器をヘッドフォンで聴くのがすっかり主流になり、ついで多いのがパソコンに小型スピーカーをつないで聴くというスタイルですね。そして、スピーカーを部屋に置いて聴くのは2チャンネルではなく、AV視聴のためが多いというのです。
 しかし、これは別に嘆かわしいことではありません。音楽なんてどんなスタイルで聴いてもいいのです。逆にオーディオ雑誌やライター、マニアたちが2チャンネルステレオを神聖視しすぎて、一般の人からするとオーディオの敷居が高くなってしまった嫌いがあるのではないかと私は思います。
 私は本来、音楽作品を作る立場から仕事を始めましたので、音楽の聴き方については2チャンネルオーディオを特別視するつもりはありませんし、ヘッドフォンで聴くことを軽んじる気もありません。ただ、ヘッドフォンやパソコンで聴く人が主流になったのなら、今度は逆にその方々に、スピーカーで聴くオーディオの魅力や楽しさをお伝えしたいと思います。
 そういう観点からいえば、AVアンプを2チャンネルオーディオに使う、という前回のテーマは今後非常に有効なスタイルではないかと思います。もちろん、それは私自身がそれなりの長期間体験し、十分に楽しんでいる上でお話しているのです。最近のAVアンプの機能の充実は目覚しいものがあります。しかし、単にサラウンドモードの多彩化、チャンネル数の拡大、操作性の改善などにの機能面に留まらず、音質面でも2チャンネルアンプに遜色ない、あるはそれを凌駕するような進歩をみせているものもあります。今後は、ぜひAVアンプの導入を検討してください。
 AVアンプの効用については前回お話しましたので、今日は蛇足と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、AVアンプを2チャンネルオーディオ用としても使う際の注意事項を、参考のためにいくつか挙げておきたいと思います。では、早速。

●まずスピーカーですが、2チャンネルオーディオ用のスピーカーと、AVシステムの前方2チャンネルは同じスピーカーを使うのがいいと思います。このほうがAVの音にとっても音質的に有利です。逆にAVが先行していて、前方2チャンネルのスピーカーが決まっている場合、もしそのスピーカーの能力が低い場合は、思い切って取り替えるほうがいいでしょう。

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●AVアンプは入力端子が多いのが普通ですが、普段あまり使わないものはつながないほうがいいでしょう。必要最小限の機器をつなぐことが原則です。端子の間隔が狭いものが多いので、つなぐ機器を減らして1つおきにつなぐほうが、取り付けやすさの上からも、安定度の面からもいいでしょう。
 普通は、ブルーレイやDVDのレコーダー(もしくはプレーヤー)、CDプレーヤーもしくはDAコンバーター、そしてテレビの音声の3系統ということになります。その他の機器は使うときだけつなぐことにして空けておけばいいのです。
 また、入出力端子には原則として、つながれる機器名が、Blu-ray、DVD、CD、TVなどと書いてありますが、これは自分の都合で変えても問題ありません。むしろ、差し込む端子をしょっちゅう替えたほうが、端子のためにも、セレクターのためにもいいかもしれません。私はまったく適当につないでいます。その代わりセレクターを使う場合はちゃんとどこにつないだかを覚えておかなくてはいけませんが!

●前項で少し触れましたが、入出力端子は2、3ヵ月に1回はケーブルを外してクリーニングしてください。専用のクリーナーを用意しておくといいでしょう。ただし液剤やスプレー剤を使わなくても、柔らかい布でよく拭くだけでも効果があります。つなぐ端子を一定に決めずに、始終差し替えることがいいというのも、差し替えることがクリーニング効果につながるからです。端子をいつもきれいにしておくことは、汚くなった端子をクリーニングしてみればすぐにその効果がわかります。数万円上の機器に取り替えるのに匹敵するほどの効果があります!

●AVアンプはその機能の豊富さから、一般的なオーディオアンプよりスイッチ類が多くなっています。サラウンドやDSPモードの切り替え、イフェクター類のスイッチが、丸いのやら長細いもの、そして押すタイプや回すタイプなど、じつにさまざまなものがついています。
 これらの2チャンネルオーディオでは普段あまり使わないスイッチ類の管理が音質のためにはとても重要です。使わずにそのままにしておきますと、室内の湿度やホコリの程度によって違いますが、この部分が劣化したり接触不良をおこすことがあります。
 使わない部分だから問題ないだろうと思う方もいるかもしれませんが、配線によっては無関係でいられないものが多いのです。放置しておくと、ある日突然ノイズが出たり、歪んだり、あるいは片チャンネルの音が出なくなったりという症状が起きます。これを避けるためには、一定期間ごとに、これらのスイッチ類を電源を落とした状態で、グリグリ回したり、押したり離したりすることが必要です。これはモード切替やボリュウムのスイッチも同じです。時々グルグル回転させるといいでしょう。

●次に置き場所です。これは2チャンネルオーディオとまったく同じで、しっかりした床や、丈夫なスタンド、ラックなど安定したところに置くことが大切です。そして、AVアンプは通常7つ以上のアンプが内蔵されていますので、特に放熱性の良いところに置いてください。天板の上に何もを置かないのが鉄則であることは当然ですが、ラックに置く場合は、アンプの天板とラックの板の距離を十分に確保してください。熱に弱いチップがオーディオアンプよりたくさん使われていますから、放熱には特に注意が必要です。

●最期に、2チャンネルオーディオ派が嫌うことなので、声を小さくしてお勧めしたいことがあります! それは、AVアンプのDSPやサラウンドモードを使うことです。アンプによって名称が違うと思いますが、HALLとかSTADIUM、THEATERなどというポジションです。これをぜひ試してみてください。どのディスクにも合うポジションはないと思いますが、かなりいい雰囲気の再生が得られるポジションが見つかる場合があります。
 特に古い録音や、やや間接音の成分が不足して硬い感じのする場合など、録音について少し不満のあるディスクに適用すると、思いのほかいい効果が出るものがあります。昔はトーンコントロールを使うことさえ嫌う、ストレート派、ピュア派がオーディイオマニアには多かったのですが、それはあまり意味がないと思うべきです。むしろ積極的にサラウンドモードやトーンコントロールを使ってアクティブに音を楽しんだほうがいいと私は思います。
 ただし、その場合は、付加する効果が過大にならないように、いつも申し上げている“いい音”の尺度に合わせて、“自然(ナチュラル)さ”を失わないようにすることが、いい効果を得るポイントになります。