B&W 805 Diamond ~英国モニター系の最新2ウェイ機(2)

 1995年10月に発売された、あの“オウム貝”の名がつけられたオリジナルの「ノーチラス(Nautilus)」を聴いたときには、とても驚かされました。何といったって、今までのスピーカーとは形がまったく違いました。じっと見つめていると、ゆるゆると動き出しそうな姿をしています。やがて細長く伸びた「ノーチラス・チューブ」を後方にたなびかせて走り出しそうです。
 音を聴いて、驚きはさらに深まりました。ノーチラスの周囲一帯の空気が浄化されたかのように、独特な静寂感が漂い、そこに静かにエリック・クラプトン(Eric Patrick Clapton)のギターソロが浮かびあがりました。曲名は忘れましたが、その音の粒立ちのよさと響きの美しさは、今でも耳に残っています。

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 今回この原稿を書こうとして、あらためて写真を見ていたら、妙なことに気づきました。「ノーチラス(写真右)」の形は非常に斬新で特殊なものですが、前回ご覧いただいた「Matrix801(写真左)」をよくよく見つめると、このズングリした四角っぽい形を、特殊撮影で見るようにゆっくりと丸みをもたせて変形していくと、「ノーチラス」の形になっていくような気がしてきたのです。まあ、老齢化による妄想症候群によるのかもしれませんが!
 しかし、「ノーチラス」が誕生する背景には、B&Wが創立以来追い求めてきた「録音された音をありのままに再現(Reproduce)したい」という、再生の美学が「Matrix801」で一応の完成を迎えたことがあるのではないかと思うのです。そして、世界的に高い評価を得た「Matrix801」の延長線上に、次のステージの再生美学を具現するものとして、「ノーチラス」は生まれたのです。まったく違った造形物に見える2つのスピーカーが、じつは良く似ているように感じられたのはそのためではないでしょうか。なお、オリジナル・ノーチラスについての詳細はB&Wのホームページでご覧ください(色文字列をクリックすると該当ページが開きます)。

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 今年4月から発売されている「800 Diamond」シリーズは、5年前に発売された「800」シリーズのリニューアルで、全部で7モデルありますが、最大の技術的特徴は全モデルにダイヤモンド・ドーム・トゥイーターを採用したことです。技術の詳細はB&Wのホームページをご覧ください。
「805Diamond」はシリーズ中、唯一の2ウェイ・ブックシェルフ。ダイヤモンド・トゥイーターの口径は 25ミリ(前の「805」のトゥイーター素材はアルミニューム)、中低域ユニットは口径165ミリのケブラーコーンです。外形寸法は238(幅)×418(高さ)×351(奥行)ミリ、重量は12キログラム。仕上げがチェリーウッド、ローズナット、ピアノ・ブラック・グロスの3種あり、前2種はペア税込で588,000円、ピアノ・ブラックは630,000円。
「805Diamond」は背面から見るとこんな形をしています。気になるトゥイーターの構造と合わせてご覧ください。

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 高音域のユニットが変更されたことに対応して、新たに磁気回路の強化などを含む中低音域のチューニングも行なわれています。完成度の高い「800」シリーズがさらに熟成し、再現力の豊かさが増したことは間違いありません。B&Wのようなメーカーの製品は、細かな技術を調べるよりも、その性能を信頼して、いかにうまく鳴らすかを考えるほうがいいと思います。私は長年のB&Wとの付き合いで、全幅の信頼を置いています。2ウェイ・ブックシェルフでは今年度前半、イチオシのスピーカーといっていいでしょう。
 ところで、製品情報が掲載されている、オーディオ専門誌を久しぶりに覗いて見ましたら、かなりベテランのライターが、「(前作と比べると)一聴でクリーン&クリア&オープン&ノンストレス。どこまでもスカーッと伸びてゆく音が実に爽快だ」と、清涼飲料水のコピーみたいなことを書いているので、思わず笑ってしまいました。これでは気が引けるのか「ダイヤモンドトゥイーターらしいという先入観のシャキシャキ音からはまったく無縁でスムーズ」と加えています。普通の人はダイヤモンドから、シャキシャキした音がするなんて先入観などもっていませんよね。
「805Diamond」の印象のある一面としては理解できなくもありませんが、この表現だと、前回から書いてきたB&Wの再生の理想や、技術的特徴とは無縁で、どこのスピーカーとも区別がつきませんね。専門誌の評価はあまり参考にしないほうがいいかもしれません。