オーディオの分離独立主義と統合一体主義 ~(続々)一体型システム「RZ-1」

 新版・もういちどオーディオの第3回です。前回に引き続きエソテリックのプレーヤー、アンプ一体型システム「RZ-1」を紹介しながら、今日はオーディオにおける分離独立主義について調べてみようと思います。
「分離独立主義」とは、オーディオ機器のもつさまざまな機能は、なるべく1つのボックス(キャビネット)に入れず、それぞれを独立したボックスに入れようということです。たとえば、アンプを例にしますと、入力信号の選択をしたり、音量や音質の調整をするプリ部(コントロール部)と、信号を増幅するメイン部(パワー部)を、まとめて1つのボックスに納めたものが、「プリメインアンプ(インテグレーテッドアンプともいいます)」です。そしてこの2つの部分を分離して、それぞれ別なボックスに入れるのがセパレートアンプという方式で、プリアンプ(コントロールアンプ)とメインアンプ(パワーアンプ)に分けられます。

 このように役割の違う部分を別なボックスに入れるのは、オーディオ信号は微弱ですから、違った役割の回路が干渉し合って音質を悪化させる悪影響を避けるためです。アンプではさらに分離を進めて、電源部を別ボックスにすることもあります。このように、オーディオでは高音質を追求していくと、どうしても分離独立したくなるもので、これを私は“分離独立主義”と名づけたわけです。
 しかし、分離させるということは、ボックスが増えるわけですから製造コストも増えることになります。さらに分けられた機器を接続するケーブルも必要になりますし、それぞれの置き場所の工夫もしなければなりません。純粋志向は正しいのですが、いいことばかりではないのが世の常。
 そして、オーディオ用に広いスペースが確保できたり、予算もたっぷりある人ばかりではありませんから、同一ボックス内の各セクションの相互干渉を避ける工夫を徹底させて、一体型でも十分に“いい音”を出せる技術をオーディオメーカーは追い求めてきました。さまざまなオーディオ技術のなかでも、この相互干渉排除技術は近年もっとも進歩した領域の1つといってもいいでしょう。その成果を生かして作られているのが、分離独立主義に対して、統合一体主義とでもいいましょうか、一体型のアンプなのです。

 ここで、写真をご覧いただきましょう。これはパイオニア(Pioneer)のAVアンプ「SC-LX82」です。ご存じのように、AVには5ch(チャンネル)、5.1chというマルチ音声が必須ですが、このアンプは前方2ch、センター1ch、リア2chのほかにもう2ch、合計7chのアンプです。ということは、この1つのボックスのなかに、アンプが7つ入っているのですね。リアパネルの端子群を見ると、たしかにスピーカー出力端子が7つあります。

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 ステレオの2つでも分離しなくちゃ“いい音”にならない、という法則を信じている人がまだいるなかで、7つですよ。しかも同時駆動で110W×7というのですから驚きです。ちょっとした大型スピーカーをつないだって、特に広いスペースでなければ問題ないというタフガイです。18.5キログラムで価格は335,000(税込)。音質もなかなか評判がいいようです。もっともこのAVアンプは統合一体主義の極端な例でしょう。

 下の写真はごく一般的なステレオ2chのアンプが入ったプリメインアンプで、デノン(DENON)の「PMA-2000SE」です。下は真上から内部を見たものですが、これを見ただけでもこのアンプがボックス内でいかにセクション分離独立を徹底しているかがわかります。30年前のプリメインアンプとは比較にならないほどのしっかりした造りは、まるで高級パワーアンプの内部を見るようです。横幅434ミリ、高さ181ミリ、奥行き435ミリ、24キログラム。中級クラスのセパレートアンプに負けない実力派といっていいでしょう。価格は178,000円(税込)です。

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 それでも、「アンプはどうしてもセパレートでなければ満足できない」という方もオーディオファンにはたくさんいます。そこで、日本製のセパレートアンプの代表として、アキュフェーズ(Accuphase)のプリアンプ「C-2810」(上)と、1Ω負荷で1,200Wという大出力を誇るモノーラルパワーアンプ「M-6000」(下)をご覧いただきましょう。

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 堂威風堂々、という感じがしますね。エルガーのあの有名なマーチのメロディーが聞こえてきそうです。パワーアンプは左右のチャンネルも分離した徹底分離のモノーラルタイプですから、2chのステレオ音楽を再生するのに、2台必要となります。プリアンプも重厚なつくりで22.5キログラムありますから、38.5キログラムのパワーアンプ2台と合わせると、総重量は99.5キログラムとなります。まさに重厚長大派の代表ですね。
 オーディオの“夢”を象徴するような存在のこういう製品にも、この「もう一度オーディオ」では大いに登場してもらおうと思っています。購入できるできないとは別次元で、ハイエンド製品と呼ばれる“重厚長大派”の本物には、学ぶべきことがたくさんありますから。
 さて、話が主役の「RZ-1」からだいぶ離れてしまいましたが、次回はいよいよその実力ぶりをご案内しようと思います。